私が小学校6年生の頃だったかな?グリは初めての病気にかかった。
言葉が話せないので、具合が悪いのかどうかわかりづらい動物でも、すぐに具合が悪いとわかる程、ガリガリに痩せ、脱毛が激しく、何を与えてもそっぽをむくし、下痢は続くし、何よりも元気がなかった。
私はせっせと貯めたお年玉を握って、自転車の前籠にグリを載せ、生まれて初めての動物病院の門をくぐる事になった。
動物病院に来ている動物たちは、みな飼い主にべったりと寄り添い、不安げに顔を見上げていた。
中でも特に印象的だったのは、当時大ブームだったちゃうちゃう犬の多かった事。
グレートデン(だっけ?)と言われる超大型犬がブルブルと震えていた事。
何されるんやろう…?ひとりで病院へ来た私は、愛犬グリより余裕がなかったかもしれない。
いよいよ名前を呼ばれて診察室へ入ると、先生に問診を受けた。
どうやらフィラリアにかかってしまったらしい。
アホな私でもフィラリアがどういう病気か位は安易に想像できた。
先生は淡々と作業を進め、注射をうとうとグリを診察台の上にのせた。
身の危険を感じたグリは激しく暴れて吠えたてた。
私は一生懸命なだめ、診察台に再び乗せようとしたが、いうことを聞かない。
そこで獣医が一言。
自分でコントロール出来ないような犬を連れてきても、何もできへんわ。
飲み薬だけ渡すから、飲ませてみて。治る可能性も殆どないので、気になったら今度はよその病院へ行ってもいいんちがう?
はぁ??である!
何ちゅう無責任な事!
でも確かに暴れる愛犬を大人しくさせれなかったのは事実。
今なら猛烈に抗議しただろうけど、当時の私は診察室を後にするしか出来なかった。
今思い出しても、嫌な先生だ!でも初めての動物病院。こんなもんなんかな?いや?子供やからナメられてる?この先生、ほんまに動物好きで獣医なったんかな?色んな思いが胸に渦巻いていた。
帰って病院での出来事を父に話すと、父はすぐに車にグリを積み込み、私を連れて違う病院へ走ってくれた。
そこは、家から7~8キロ離れた動物病院。
グリは初めて乗る車に少々戸惑いながら、ずっと窓の外を眺めていた。
病院へついて、さっきの今で、グリは、またヤバい所へ連れてこられた!と落ち着きのない様子。
診察室へ呼ばれ、手慣れた獣医さんにぷっすりと注射された。先ほどの獣医さんとは動物の扱いが天と地程も違った。
しかし注射をさ
れてグリは、またまたパニックである。さすがに父の強い力で抑えつけられた。くどいようだが、ここの獣医さんは先に行った獣医さんより、はるかに優しく、嫌みの一つも言わず、ごめんごめ~ん!痛かったねぇ~。と笑っていた。
病院は選ばないとダメね…
前出の先生は一体なんだったんだ?と悶々としながらも、自分の無力さが情けなく思えた。
お金払ってたるから、車にグリのせといて。
父の言葉に従おうと病院から一歩出た途端、よほど怖かったのだろう。。私の手からするりとリードが抜け、グリは猛ダッシュで走り出した!
すぐに追いかけたが、車の通行量の多い道で私はグリを見失った。もし車に跳ねられたらどうしよう?!吐き気がする程ドキドキした。
父にそれを伝えたが父は一言も怒らず、そら、一日に2回も病院は嫌やわな。探そ。と言ってくれた。
うん!父もすぐに見つかると信じていたから脳天気に構えいたのかもしれない。(わざと、そう振る舞ってくれたのかも?)
けど、2時間以上名前を呼びかけ探し歩いても、どこからも出てこない。
父はどうしても外せない配達の仕事の時間が迫っていて、これ以上探す時間はないと言った。
じゃあ歩きながら探しながら帰るから、先かえって。と私。
こんな遠いとこから今のお前がふらふら帰ってくる方が危ない!と思ったのだろう。
父は、グリはアホやないから、帰ってくるやろ。配達終わったらまた探しに来るから。
父の言葉が気休めだとはわかっていたが、私がその場に残る事は許してもらえず、泣く泣く車に乗り込んだ。結局私の今の力ではグリを守る事さえ出来へんねんやん…
車の中から見える範囲に目をこらしたが、結局見つける事も出来ずに家に到着してしまった。
私は自分の不甲斐なさにシクシク泣きながら車を降りた。
すると車の後ろに白い物陰が見えた。
ん?
覗きこむと、そこにはグリがちょこんと座っていた!!!
私の体温が一気に上昇する。グリ~~~っっっ!!その声に父も驚いて車を降りてきた。
車に乗ると、また病院へつれていかれると学習したのだろうか?
彼は、私達が車に乗り込むのをどこかで待って、走り出した車を追いかけて家まで帰ってきたのか?
もしくは、ニオイだけを頼りに自分ひとりで家に向かって走っていたのかも知れない。
車に載せて遠出した犬が、その道を覚えてひとりで家に帰り着いたと言う映画を見たことがあった。
車に乗せられた犬は、窓から顔をだし家から行き先までの道を嗅覚で覚える事ができる。と聞いた事はあったが…
とにかくグリが無事であったこと、そのやせ細った体で長い道のりを走ってきたこと、何よりこの家に帰る事を選んだこと。
全てに感動し、グリとだったら無敵なような気がした!フィラリアなんかやっつけたるわいっ!と鼻息も荒く、彼との病気との戦いは始まった。
正直、落ち込んでる暇も余裕も無い位、グリの病気は進行していた。。