玄関先の座布団の上に寝かされて、腹水はどんどん流れ出た。
車に跳ねられたのかと思ったが、何処にも外傷はなかった。
母を呼び、通勤前の兄を呼び、皆それぞれ朝の忙しい時間ではあったが、グリの側を離れようとしなかった。
私は、硬直した足をさすり、兄はしきりにグリに『しっかりせえよ』と声をかけていた。
母は、ただただグリの前足を握って何かに祈っていた。
時々、グゥ~~~!!と地を這うようなうめき声を出したかと思うと、静かになる。歯をむき出しにして顔を歪めたかと思うと、小刻みに震え始める・・・
私達はなす術もなく、ただ体をさすり、極楽へいける事だけを祈っていた。
そうこうしているうちに、兄が出勤時間になってしまった。
『嫌やなぁ・・・これで最後か?グリ。俺が帰ってくるまでに逝ったらあかんぞ』
兄は腹水やヨダレでぐちゃぐちゃになったグリを抱きしめて、涙をこらえて仕事へ行った。
いったい玄関で何時間がすぎただろう・・・
2~3時間は苦しんでいたと思う。
私が背中をさすった時、今までに1度も聞いた事の無いような
獣の声を大きく上げた。初めて見せたグリの野性だったように思う。
大きな大きな、力強いもの凄い声だった。
そしてそのまま、グリは眼を開ける事は無かった。
私も母も大声で泣いた。
グリの温もりが残る体にすがって、ワンワン泣いた。
私は三日三晩泣き続けた。最初の夜は、遺体の側で夜通し線香をたき続けた。
2日目の夜は、ハコに入れた遺体を部屋に運び、見つめてはずっと泣いていた。
3日目の夜・・・見かねた母親が、お腹の子に障るから、もう泣かんとき・・といいに来た。
4日目の朝、私は主人と棺おけを作った。
ダンボールで出来たチープな棺おけだけれど、きちんと白い布を張って、中も敷き詰めて、グリの遺体を入れ、沢山の花と。オモチャと、餌と、私達家族の写真を入れて、自腹をきって動物葬儀をしたのだ。
焼かれてでて来た小さな骨は、今も動物霊園に眠っている・・・
欲年、戌年生まれの赤ん坊が生まれた。今の息子である。
嘘みたいな話だが、彼はグリと好物が一緒。
竹輪が大好物なんである。
13年生きたグリが亡くなって13年が経ち、グリは夢の中で『ありがとう』と深々と頭を下げた。
あのとき身ごもった息子は今、13歳だ。人間、家畜動物・・・呼び方はそれぞれあるが、グリの命と引き換えに息子の命が生まれてきたように感じてならない。
流産の危機を何度も乗り越えられたのも、出産時に息子の体が半分壊死していたのに関わらず、危機を乗り越えられた事。
産褥熱と麻酔のショックで昏睡状態が続いた危ない私を救ってくれたのも、グリの力のような気がする。
13年間、私の1番の友として、癒しとして私の側に君臨し続けたグリ。
自分の死期をさとって、新しい私の生きがいを授けてくれたのだろうか?
それとも新しい私の生活に安心して自分の役目を終えたのだろうか?
自分の死を持って、私達を護ってくれたのだろうか?
そんな気がしてならない。
この13と言う数字は、私にとって大きな意味があると考えている。
だから、あえてこんな長文にしてまで、書き記しておきたかったのだ。
あの夢以来(愛犬との思い出・・・1)参照、彼の存在を猛烈に書きたくなったのです。
読者の皆さん・・・長々とご愛読いただきまして、ありがとうございました。
皆さんの家のワンちゃん、ネコちゃん、ウサギちゃん・・・?
一杯一杯、愛情を注いであげてくださいね!
以上・・・『愛犬の部』 完結☆